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「サッちゃんの明日(あした)」 [舞台]

「サッちゃんの明日(あした)」

作・演出:松尾スズキ
出演:鈴木蘭々、宮藤官九郎、猫背椿、皆川猿時
   星野源、家納ジュンコ、小松和重、松尾スズキ

10/3(土) シアタートラム


毎度おなじみ、チケットの取りづらい大人計画。
今回も、何度もトライしたあげく取り逃がしてクサッていたところ、
かうぞうさんからありがたいお誘いを頂いて、観に行ってまいりました。

会場の規模に合わせたのか、
単に役者のスケジュールが合わなかったのか、
大人計画の公演にしては、珍しいほど出演者がすくない。
キワモノ役者(?)の阿部サダヲや荒川良々が出ていないせいか
(皆川猿時は出てるけど)地味な印象を受けたが、中身は濃厚。
大人計画らしさ満載の芝居を堪能した。

さほどのネタバレはないけど、10/14~大阪・北九州公演があるので、ここで折ります。


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NODA・MAP第14回公演「パイパー」 [舞台]

NODA・MAP第14回公演「パイパー」

1/4(日)~2/28(土) Bunkamuraシアターコクーン



実に18年ぶりに観た野田秀樹作品は、
テイストは相変わらずだが、昔とは印象がだいぶ違っていた。
そもそも、今回の芝居を観ようと思ったきっかけは、
松たか子と宮沢りえの出演であり、
このふたりの芝居を観ることができれば、
多少つまらなくてもいいか、くらいに思っていたのである。
だが、これがとんでもなく失礼な誤解だった。

正直言って、めちゃくちゃ面白い!
役者それぞれの演技と、
エネルギーをひとつも洩らさずまとめあげた構成、
そして印象的で美しい舞台装置が見事な調和をなしている。
2時間強の上演時間中、集中力が途切れることが一瞬もなかった。
というよりもむしろ舞台が進むにつれ、
どんどん目が離せなくなっていったのだ。
やはり芝居をつくる人というのはすごいものだ。無条件で尊敬する。


舞台は1000年後の火星。
松たか子と宮沢りえ演じる姉妹は荒廃した
火星の“ストア”に細々と暮らしている。
もはや食糧もすくなくなり、
生きる希望さえ見いだすことが難しくなってきた。
地球、あるいは他の星から救いの手はさしのべられるのか――。

非現実的な世界を壮大なスケールで描く
SFテイストのストーリーには、
ひじょうに現実的なテーマがギッチリギュギュッと詰め込まれていた。

幸せを数字で表す(測る)ことへの批判。
人間が人間でいるために持つべき尊厳について。
あるいは、最も基本的な命題、生きるとは、どういうことか――。
さらには家族の絆、環境問題、狂信的な宗教への疑問などなど
いくつものテーマが重層的に折り重なり、それぞれを
有機的に絡ませながら、語られていく。
場面もスピーディーに展開するが、
めまぐるしい印象はほとんどなく、混乱することもなかった。
それは、一つひとつのテーマが場面ごとにきちんと整理されていて、
しかも作者の思想が明らかに提示されているからではないかと思う。

松たか子と宮沢りえ、ふたりの主演女優がすごく良い。
彼女たちの役柄上の性格は正反対で、
そのためいつもケンカごしなのだが、
ライバルというよりも同志のようであり、
舞台上で寄り添いながら、お互いの個性をひきだしているようであった。
ふたりが手をつないで、長いせりふを交互に放っていく場面が圧巻。
心の底からほとばしる情熱、エネルギーをたしかに感じさせながら
ことばに魂を載せ、空間いっぱいに声を響かせた。
あまりに力強く切実なことばの洪水にものすごい衝撃を受け、
ふいに胸をつかれて、涙が止まらなくなってしまった。

松たか子と宮沢りえを舞台で観たのは初めてだったが、
彼女たちがこんなにいい役者だとは思いもかけなかった。
そんな驚きを感じることさえ新鮮で、うれしく思う。

また、異星人を演じるコンドルズのメンバーの身体表現がユニークだ。
包容力があるようで、冷たく突き放すようでもある。
状況によってその存在価値が変化する、流動的な生き物を
ゆるやかで流れるような動きで表現していた。


そんな濃厚な芝居を観たあとは、
五感をフルに活用したせいか、ひじょうに疲れた。
この疲れがまたなんとも心地よい。そんな感覚も久しぶり。

そしてその後、興奮さめやらぬままBunkamuraを出て、
円山町方面へずかずか上って行った。
この日は、もうひとつ見逃したくないイベントがあったのだ。

……以下、次の記事へつづく☆
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「バレエ・フォー・ライフ」 [舞台]



モーリス・ベジャール・バレエ団2008年日本公演
「バレエ・フォー・ライフ」

6/15(日) 東京文化会館

振付:モーリス・ベジャール
音楽:QUEEN、ウォルフガング・A・モーツァルト



このごろ更新が恐ろしく滞っているが、
理由はひとつじゃないから、書かない。
まあ、いろいろあるのだ。うんざりするほどな。


先日、モーリス・ベジャール・バレエ団による
「バレエ・フォー・ライフ」を観てきた。
この演目は、QUEENの音楽(あるいはフレディ・マーキュリー)を
テーマに、ベジャールが振り付けたものである。


QUEENを知ったのは、ちょうどフレディが亡くなる直前だったと思う。
ヒット曲は知っていたが、リアルタイムで聴いていたわけではなく
社会人になったころ、QUEEN好きの先輩から教えてもらったのだった。
美しい曲をつくる人たちだと思った。これはロックじゃないな、と思った。
ロックという枠を軽々と超えて、世にも美しいサウンドを生み出す。
こういう人を天才と呼ぶのだなあ、と思ったのだった。
それから何度となくQUEENの曲を聴くうちに、いつしか大好きになった。
だから今回の公演は、どうしても観たかったのだ。

「バレエ・フォー・ライフ」は、
自らエイズであることを公言したその直後に
はやばやと逝ってしまったフレディの生きた軌跡、ことに
音楽にかける情熱や、死を目前にしての絶望、そして
生きることの喜び、大切な人たちへの思いをQUEENの曲にのせてつづっている。



オープニングは、「イッツ・ア・ビューティフル・デイ」。
新しい朝を迎えた喜びを表す、希望に満ちたダンス。
フレッシュでエネルギッシュで、爽快感にあふれていた。

つづくナンバーはいずれも、
力強い一方で内面を深く見つめた繊細な踊りを見せてくれた。
ソロ・ナンバーも群舞も、やはりベジャールの振り付けは面白い。
バレエとはいえ、その動きは不自然で奇妙だったりするが、
それこそがまさにベジャールのダンスなのだ。
ダンサーたちはみな枠にとらわれず、のびのびと踊っているように見えた。

圧巻だったのは、「Radio Ga Ga」と「ラヴ・オブ・マイ・ライフ」。
ライブ音源を使っていたこともあり、
まるでライブ会場にいるかのような雰囲気を醸していた。
とくに、「ラヴ・オブ・マイ・ライフ」は泣ける。
客席にマイクを渡して大合唱しているフレディの姿が
目の前に浮かんでくるようだった。
客席はあくまでもバレエを観にきた客ばかりなので、
まるでおとなしかったが、それが逆に不自然に思えてしまったほどだ。

さらに、フィルム「ブレイク・フリー」では、
フレディと同じく夭折したダンサー、ジョルジュ・ドンが
生きることに執着し、もがき苦しんだ彼の心情を壮絶な表していた。

そして、ステージは「ショー・マスト・ゴー・オン」で幕を閉じる。



音楽もダンスも主役である、すばらしい舞台だった。
時折フレディの叫ぶような歌声に、ぐっと胸をつかまれ泣けてきた。
ベジャールのフレディに対する愛情、
フレディが人々に惜しみなく与えた愛情と友情に満ち満ちていて、
あたたかく深い余韻がいつまでも残った。


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「空白に落ちた男」 [舞台]

 

「空白に落ちた男」
1/14(月・祝)~2/28(木)
ベニサン・ピット
主演:首藤康之
作/演出・出演:小野寺修二
音楽:coba

 

バレエダンサー首藤康之が
パフォーマンス集団「水と油」の演出家とコラボレーションするという。
しかも、ベニサン・ピットという小ハコでというから、
なんとしてでも見逃したくなかった。
いつ行こうかとスケジュールを検討しているとき、
たまたま友人から誘いがあったので、これ幸いと観賞してきた。


初めて訪れたベニサン・ピットは
外観から想像できる通り、昔の建物を活かした劇場。
スタジオも併設されている、ヘンテコな施設だ。
こうした特殊なハコで行われる、
芝居なんだかダンスなんだかよくわからないステージには
否が応でも期待が高まる。
世界的ダンサーをあり得ないほど近くで観られるという点も、
アドレナリンを高める一因であるのは言うまでもない。

 

cobaが手がける音楽が流れ、徐々に暗転。
そして役者が舞台に登場する。
沈黙。
タバコを吸う。
沈黙。

バレエでもなく、マイムでもなく、コンテンポラリーでもない。
敢えて言うなら、そのすべてが融合された
まったく新しい形のパフォーマンスである。
一応ストーリーはあるが、それもあまり重要ではない。
全体を通した大きなテーマを踏まえながら、
コミカルな味わいを添えた
一連のショート・ストーリーで構成されている。

イベント概要では首藤康之がフィーチャーされているため、
(名があるから当然なのだが)
彼が主役なのかと思っていたが、そうでもなかった。
キャスト全員が同じスタンスで、パズルの1ピースのように
パフォーマンス全体において欠かせない役割をもつ。
一連の動作の中で繰り返されるやりとり、
そして1秒単位でバトンを受け渡していくかのような
スリリングなコミュニケーションは、人間技とは思えないほど
スムーズで均一化されていて、一瞬も目が離せなかった。
その一方で、一人ひとりの個性は存分に発揮される。
それぞれがいつか世界を蹴破って飛び出していきそうな印象も受けた。

圧巻は女性キャストによるソロ。
力強くしなやかなコンテンポラリー・ダンスを見せてくれた。
そしてまた、首藤康之のソロ・シーンが素晴らしい。
大きな体をステージいっぱいに広げ、
淡々とステップを重ねる姿は、どこか職人のようでもあった。

巧みな仕掛けを施した舞台装置、cobaの憂いを帯びたメロディーは
ここしかないと思えるほど計算されつくしていて、ピタリとはまる。
ひとことでは表しようのないパフォーマンスに、
しっかりとした筋を一本通すかのようだ。

どこに着地するのかわからないパフォーマンスは
心をざわつかせたが、決して不快ではなく、
むしろ身をゆだねたくなる心地よさを感じた。

このステージの面白さを伝えるのは難しい。
ただひとこと言えるのは、観なければわからないということ。
体ひとつで表現することの凄味、そして生の圧倒的な迫力を
全身に浴びるように味わった。


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はじめての歌舞伎! [舞台]

社会人のための歌舞伎入門
解説「忠臣蔵の世界」
秀山十種の内 松浦の太鼓

国立劇場 大劇場 12/21(金)


siccaさん記事を読んで、がぜん興味がわいて演目をチェックして行ってきた。
はじめての歌舞伎鑑賞だ。

今回の演目を選んだのは、何といっても中村吉右衛門さまが出演するから!
ドラマ「鬼平犯科帳」を見て以来、吉右衛門さまに惚れてしまったのだ……。

「社会人のための歌舞伎入門」とは、
講談による解説と歌舞伎の演目からのダイジェストで構成されるもの。
今回の演目は、年の瀬にふさわしく忠臣蔵だった。


講談では、忠臣蔵の概略と歌舞伎のみどころが話される。
生で観たのは初めてだったけど、これがいい!
笑いも交えた粋でしゃれっ気のある語りは
聞いているだけでも心地よく、つづく歌舞伎への期待が高まるというもの。

そしてメインイベント「松浦の太鼓」。忠臣蔵の外伝である。
吉良邸の隣にある松浦邸を舞台に展開していく。
松浦の殿様、鎮信(しずのぶ)を演じるのは中村吉右衛門。
おちゃめで、そのくせ決める場面ではきっちりと存在感を示す芝居が楽しい。
そして、鎮信のお気に入りであるお縫の兄で、
四十七士のひとりである大高源吾を市川染五郎が好演している。


歌舞伎に対して、小難しくてシリアスだというイメージがあったけど、
それがまったく違っていたことに驚かされた。
なんとまあ、笑いどころがたっぷりで誰でも楽しめる芝居なのだ。
初心者のわたしが言うのもおこがましいが、
伝統芸能として長く愛されている理由がはっきりとわかった。
わかりやすくて、見どころが本当に多い。
今まで、機会がないからといって歌舞伎を見たことがなかったのが、
本当に悔やまれてしかたがない。
こんなにおもしろいと知っていたら、もっといろいろ見ることができただろうに。

入門と銘打っていてもツウの方が多いらしく、
周りの会話に耳を傾けているのも興味深かった。
客席から「播磨屋」「高麗屋」などと声がかかるのも楽しい。
とにもかくにも、はじめての歌舞伎体験は
得るところがあまりにも多すぎて、目を大きく開かされたのだった……!

こんなにおもしろい催しを教えてくれたsiccaさんに感謝!!
ありがとうございま~す♪


 


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Symphonic Ballet 「Rhapsody in Blue」 [舞台]

Symphonic Ballet 「Rhapsody in Blue」

6/15(金)〜17(日) Bunkamuraオーチャードホール

出演:服部有吉、ラスタ・トーマス
指揮:金 聖響
ピアノ:松永貴志
演奏:東京フィルハーモニー交響楽団

会社で情報誌を何げなくパラパラめくっていて
飛び込んできたのは、「服部有吉+金聖響+松永貴志」の文字。
個人的に気になる3人のコラボレーションによる公演があるという。
なんじゃ、こりゃー! 観に行かねば!と逆上しつつチケットをゲット。
17日に待望の公演を観に行ってまいりました。

服部有吉はハンブルクバレエ団で東洋人初のソリストとして
活躍した後、2004年に演出家、振付家としてデビューした
いまもっとも期待されるダンサー。
ちなみに、作曲家、服部良一の孫である。

金聖響はオーケストラ・アンサンブル金沢や
シエナ・ウインドオーケストラとの共演で注目を集める指揮者。

そして松永貴志は、10歳でCD「SPAIN」を発表し、
ジャズピアノの巨匠ハンク・ジョーンズに絶賛されるなど
その自由な演奏スタイルが評価を得ている若手ピアニスト。

この3人のコラボレーションによるシンフォニック・バレエ。
テーマはコミュニケーションだという。
それは、オーケストラとジャズとダンスの融合、
そしてバレエ、コンテンポラリー、ストリートダンスなど
さまざまなスタイルのダンスの融合という
新たな試みに存分に表されている。
それはそれは不思議ですばらしいステージだった。

ステージの後方にはオーケストラがスタンバイし、
その演奏にのってダンサーたちは自由自在な舞いを見せる。
考えてみたら、生オケをバックのバレエを観るのは初めてだ。

1曲目、しずかに始まったのはドビュッシーの「月の光」。
世の中にこんなにもやさしい音楽があるのかと驚き、
弦楽器のなめらかな音色に一瞬で惹きこまれる。
そしてダンサーたちが登場。曲のイメージにピタリとはまる、
ひっそりとして強いコンテンポラリーダンス。
続いてメンデルスゾーン「イタリア」、バーバー「アダージョ」、
休憩をはさんでシェーンベルク「浄夜」。
コンテンポラリー、バレエ、ストリートダンスの要素を
ふんだんに盛り込み、曲ごとにさまざまな表情を見せる。
キャスト全員が男性というのが興味深かった。
女性ダンサーとは違って、アクロバティックでダイナミック。
宙にふわりと浮かぶようなジャンプは軽くてしなやかで、見ごたえがある。
なかでも服部有吉のジャンプは、その柔軟性と
筋肉を存分にコントロールした動きに魅了される。
すべての動きが印象的で、一コマずつ送りながら観ていたいほどだった。
そしてラストはガーシュウィンの「ラプソディ・イン・ブルー」。
自在に音を遊ぶ松永貴志の演奏をバックに、
ダンサーたちは実に楽しそうに踊っていた。
演奏は単にダンスのバックではなく、それだけでも主役になる。
闘うようで共存するダンスとピアノ、オーケストラ、
そのすべてが重なり合ったとき、新たな世界が生まれる。
なんとも不思議で貴重な瞬間に出会えたようでうれしくなった。

それぞれに客を呼べる演者たちを一度に観られるという
なんともぜいたくなステージ。
各ジャンルの一流たちの才能のコラボレーションによって生まれた
新鮮で情熱的なステージに圧倒された。


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大人計画 「ドブの輝き」 [舞台]

大人計画 「ドブの輝き」
5/10(木)〜6/3(日) 下北沢本多劇場

どうせチケットなんて取れないさ、とあきらめていたところ
友人が取ってくれたので、5/13(日)、当日券にて鑑賞。
何の予備知識もなく行ったら3部作で、
しかもそのうち1本は映像作品ということに軽く驚いた。
演劇という枠を大胆にぶち破り、思いもかけぬ試みを見せてくれる。
そんな冒険心にあふれる劇団は好きだ。
今まさに勢いにのっているからこそ、できることなのかもしれない。

1本目は演劇作品「涙事件」(作・演出/宮藤官九郎)。

とある事件をめぐる法廷を舞台に、
裁判官や弁護士、検事、数々の証人、被告人たちが
騒々しい裁判を繰り広げる。
この劇団だから当然のことだが、登場する人物は変人ぞろいだ。
なかでもいちばんキテたのは、検事役の阿部サダヲ。
終始テンションの高さをキープしながら、徹底した変人ぶりを見せる。
舞台でサダヲを観たのは初めてだが、やはりテレビで観るのとは大違いだ。
この人の芝居は、役が現実離れすればするほど、
その良さが際立つのではないだろうか。
それから、意外な(?)見どころは池津祥子の美脚!
色っぽくてステキ☆でした。
松尾スズキが体調不良のため降板したのは、残念だったなあ。

2本目は映像作品「えっくす」(監督・脚本/井口 昇)

勢いにのって撮りまくったような、シュールでパワーみなぎる映像。
なんだかよくわからないんだけど、
お得意の小ネタ、下ネタ、笑いが満載で楽しい。
皆川猿時のアップが恐ろしかった……。

3本目は演劇作品「アイドルを探せ!」(作・演出/松尾スズキ)

自殺をしようと樹海にやってきた男、ワタナベが
そこに“落ちていた”ゴミたちに、
自殺を考えるに至ったいきさつを語って聞かせる。
さまざまな人物の事情や思惑が入り乱れ、
思いがけない結果へとつながっていくのだが……。
偽物だってまがい物だって、
人を楽しませることができれば、それでいいじゃん
というようなメッセージが聞こえてくるようだった。
アイドル・ツララ役の猫背椿が、おバカでカワイかった。
しかし、やはりどうしても目が追ってしまうのはサダヲと荒川良々。
もーう、この人たちの存在感ったらスゴイ。
おかしくてしょうもないのに、その力強い芝居に圧倒されてしまった。

一度に3本の作品を楽しめるお得感のある公演だ。
映像も含めて3作品を同時に見せるという仕掛けはなかなか興味深い。
全作品を通して感じたのは、
今できるすべてを見せてやる!という心意気と、
からだ全体から発する演技の力強さ。
役者全員がそれぞれの個性をこれでもかというくらい主張し、
ぶつかり合いながらもその相乗効果を綿密に計算して、
ひとつの作品を真剣につくりあげているように感じた。
本気だから楽しいんだと思う。
芝居、笑い、遊び、どれをとっても本気。
役を演じることにすべてを投げ出せる役者はほんとうにステキだ。
テンションの高さに頭ン中をシャッフルされながらも
観終わったあと、なんだか元気になる。こういう芝居っていいね。


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「ウーマンリブ先生」 [舞台]

ウーマンリブVol.10
「ウーマンリブ先生」

11/2(木)〜11/19(日) サンシャイン劇場

作・演出:宮藤官九郎

出演:松尾スズキ、池津祥子、伊勢志摩、宍戸美和公、猫背 椿、
   皆川猿時、荒川良々、平岩 紙、少路勇介、星野 源
   宮沢紗恵子、宮藤官九郎、古田新太

クドカン大好きと言いながら、大人計画関連の公演を観たのは初めてだ。

ひとことで言えば、すっげーおもしろい!!
今までテレビで観ていたクドカンのドラマとはひと味もふた味も違う。
芝居そのものの迫力やエネルギーが凝縮されていた。
芝居はやっぱりおもしろい。
生であるからこそ、その場にいる人にしか伝わらないものがある。
そして、芝居にしかできない見せ方が確かにそこにあった。

前半はクドカンお得意の小ネタと下ネタが満載で、
松尾スズキ演じる夏祭冬助(かさいとうすけ)と
古田新太演じる塩谷五郎(しおやごろう)を中心に
どことなくゆるゆるしたテンポで進む。
ストーリーがどこに落ち着くのかはまったく見えない。

そして後半になるとストーリーは一気に佳境へ入る。
それまでに登場した事柄が見事につながり、
ラストの着地点に向かってぐぐっと集約してくるくだりは
スリリングで一瞬も目が離せなかった。
才能と個性が生みだす緊迫感を切らすことなく、
思わず身を乗り出してしまうほど、舞台に惹きつけられる。
コメディのようで、コメディじゃなかった。
こんなに巧みに構成された芝居を観たのははじめてかもしれない。

くせのある役者たちが、これまたくせのある役を
全力を投げ出して、パワフルに演じきっていた。
舞台の人が思うままに演じる芝居を観るほど心地よいものはない。
どこかズレてはいるものの、見事にはまりきっているから
不自然さはまったく感じさせない。
むしろこれ以上のリアルな演技などないと思えてくるから不思議だ。

客演の古田新太は、テレビで観ていても魅力的な俳優だが、
生で観ると演技の深み、厚みが増していて、さらにすばらしい。
“役者”と呼ぶにふさわしい人だ。
おふざけのように見せて芝居の芯がものすごくしっかりしている。

とにもかくにも、この芝居スゴ過ぎる。クドカン、やはり天才。
大人計画の芝居をはじめて観たせいで
インパクトが強かったこともあるが、
それを差し引いてもガッツリ手ごたえのある芝居だった。
大人計画のチケットが取りづらい理由がよくわかった。
これは、ハマるよ。
チケットがとれれば、また観たい。一度と言わず、何度でも。


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「ペテン師と詐欺師」 [舞台]

「ペテン師と詐欺師」
10/6(金)〜11/5(日) 天王洲 銀河劇場
出演:鹿賀丈史、市村正親、奥菜恵、愛華みれ、高田聖子、鶴見辰吾

天王洲 銀河劇場(旧アートスフィア)のこけら落とし公演。
2日目にあたる7日(土)に鑑賞してきました。

鹿賀丈史、市村正親のベテランおふたりをはじめ
バラエティーに富んだ豪華なキャストがそろい、
なかなか見ごたえのあるステージだった。

ストーリーは、フランスで偶然出会った
詐欺師(鹿賀丈史)とペテン師(市村正親)が共謀して
ひとりの女性から5万ドルをだまし取ろうというもの。
コミカルなせりふ、軽快なダンスと歌をちりばめながら
テンポよく見せてくれた。

鹿賀丈史、市村正親はさすがに安定していて、存在感も重量級。
ベテランならではの余裕を感じさせる。
紳士的な詐欺師と天真らんまんでおちゃめなペテン師の対比が興味深く、
ふたりのやりとりの場面では客席がたびたび笑いに包まれる。
対する奥菜恵は多少不安定なところもあるが、
フレッシュではつらつとしたかわいらしさが力量不足を補っていた。
そして、脇を固める愛華みれ、高田聖子、鶴見辰吾も
それぞれのキャラクターを見事に演じきっていた。

なかでも、市村正親は色気があってチャーミングで、
役者としてもひとりの男性としても非常に魅力的だ。
年齢をまったく感じさせない艶のある歌声、キレのある踊りに惚れ惚れする。

まだ2日目のため、こなれていない部分も若干あったが、
ひとつのステージとしてきちんとまとまっていて、
最後まで安心して見ていることができた。

ただひとつ、翻訳ミュージカルの限界なのか、
イギリス人とアメリカ人という設定の対比がはっきり見えない部分が惜しまれた。
その点を抜きにしても、陽気でわかりやすく素直に楽しめるステージだった。


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3回目のKAZくん [舞台]

熊谷和徳 TAPPERS RIOT -5Days Circle of Love+Life-
6/28(水) 青山円形劇場

熊谷和徳のステージを観るのは、今回で3回目。
どうにもこうにも、彼の魅力にどっぷりハマってしまったようだ。

青山円形劇場に足を運んだのは初めてで、
客席とステージの近さにかなり驚いた。
これじゃ丸見えだなあ、とちょっとドキドキ。

客電がおちてオープニングが始まると、
緊張のドキドキが期待のドキドキに変化する。
中央に置かれた円形のタップ板を照らすスポットに
KAZが浮かび上がり、タイトなリズムを刻みだす。
そして、客席の後ろにもダンサーが登場し、
前から後ろから怒濤の迫力で繰り出される
彼らのリズムに圧倒されてしまった。

毎回思うことなのだけど、
KAZの全身は、さながら極上の楽器のようだ。
一つひとつの動きソリッドな音となって、心を激しくノックする。
そして、いつしか胸がいっぱいになってしまう。

木村佳乃とのコラボレーションが印象的だった。
デコラティブな衣裳に身を包んだ木村佳乃が
しずかにステージに近づき、言葉を発すると
それに応えてKAZがタップを踏む。
そうした呼応が続くうち、しだいに逆転して
いつしかKAZが踏むメッセージを
木村佳乃が翻訳しているかのように感じられた。
彼女は彼を見つめている。だけど、彼は彼女を見ない。
ギリギリのところでつながっているような危うさを感じさせる。
スリリングで目が離せなかった。

おなじみクリヤマコトさんのピアノはどことなくやさしく、
KAZのタップによく似合う。
包み込んだり、競い合ったり、
タップとの微妙な距離感の変化を楽しむような演奏がステキだった。

後半、音響トラブルが起きたらしく、電源をオフにして
生音のタップを聴かせてくれる場面があったが、
正直言うと、初めて聴いた生音が、この日いちばんの収穫だったかもしれない。
やわらかく自然に響く音は、より素のKAZを表しているようだった。

ステージが近いと、客席との一体感が楽しい。
ラスト、客席のクラップをあおり、そのリズムに合わせて
踊るKAZはめちゃくちゃ楽しそうな笑みを浮かべていた。

怒りや哀しみ、切なさ、楽しさ……
さまざまな感情が全身から放たれ、ダイレクトに伝わってくる。
あまりに心地よく、いつまでも彼のダンスを観ていたいと思った。
また観に行こう。
興奮がなかなか冷めないまま、そう思った。
しばらくは、KAZのステージのたびに通うことになりそうだ。


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