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「クリムト展」 [アート]

「クリムト展」
2019/4/23(火)~7/10(水)
東京都美術館

19世紀末から20世紀初頭を代表する画家のひとり、
クリムトの単独の展覧会は、わたしが記憶する中では唯一だ。
事実、金箔を使用した作品は損壊の恐れがあるため
輸送には向かず、海外に持ち出されることはあまりないそうなのだ。
そんなわけで、今まで断片的にしか観たことのない
クリムトの作品が一堂に会する今回の展示を楽しみにしていた。

初期から修業時代、ウィーン分離派と時代の変遷に沿った
展示を観るにつれ、作風の変化を如実に感じることができる。
初期には家族など、身近な人物の肖像を多く手がけた。なかでも
学友であるフランツ・マッチュと同じ題材を描く作品が興味深い。
写実に徹した作品はほとんど同じに見えて、
クリムトの作品の方が、どこか闇を秘めているようで印象深い。
その当時からも際立った個性を発揮していたことを思わせた。

また、「ウィーンと日本」のカテゴリーでは
浮世絵をはじめとする東洋美術の影響が多く見られた。
ゴッホなどと同じく、縁取りのあるエキゾチックな色合いの作品が目を引く。
異国の芸術に似せるだけでなく、自身の作風として昇華させる
技術および芸術的センスの良さをを大変に感じさせる作品群だった。

今回のクライマックスといえば、やはり
「ウィーン分離派」カテゴリーだろう。
金箔を多用した《ユディトⅠ》に代表される
女性の描写がひじょうに官能的。独特な表情に魅了される。
さらには、部屋の三方を埋め尽くした
《ベートーヴェン・フリーズ》に圧倒された。
ベートーヴェンの交響曲第9番に着想を得た壁画は、
天使たちの合唱に始まり、起承転結のある物語を表す。
愛情あふれる接吻場面のラストに、なんともいえない至福を感じる。
金箔や石を贅沢に配した作品は
複製といえども迫力に満ちていて、
この作品を観ることができただけでも
来たかいがあったと思った。

全体的に豪華絢爛な作品の多いイメージだが、
《女の三世代》のように、生命と死を描く作品もある。
クリムトは芸術を通じて、人生の喜びと悲しみを
感じるとともに表していた。

また、近代の作家らしくポップアート的な作品もある。
ウィーン分離派のポスターなどは、
現代のグラフィックアートの原点を見るようで興味深い。
斬新な構図、スタイリッシュなレタリングなどに
優れたバランス感覚を観るように感じた。

旧態依然とした西欧美術からの
脱却を図ろうとするウィーン分離派の作品は
どれも生命力に満ちていて、心に迫ってくる。
ウィーンはいまだ行ったことがないが、
美術館の建物と同時に観たら、
もっとインパクトがあるだろうと思う。

独特の作品群の余韻に酔う。
ここ数年に観た美術展のなかでも特に印象深いものだった。

<東京都美術館ホームページ>
https://www.tobikan.jp/index.html

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