SSブログ

栗原由子 日本画展  FEAST IN THE TROPICAL RAINFOREST [アート]

栗原由子 日本画展
FEAST IN THE TROPICAL RAINFOREST
3/10(土)~3/19(月)
Bunkamura Box Gallery

2年に一度開催している栗原さんの個展を観に行く。
彼女の作品をはじめて直に観たのは2年前で、その細かい筆致と
色使いのすばらしさにたちまち惹かれてしまった。

今回のテーマは、前回の「森」から一転して「熱帯雨林」。
南国の風景は栗原さんの目にどう映るのか、そしてどう描かれるのか。
お知らせのはがきを受け取ったときから、ずっと楽しみにしていた。

エントランスを入ると、一対の孔雀が出迎えてくれた。
右には、白を基調としたクールなたたずまいの一羽。
左には、鮮やかなグリーンを基調とした華やかな一羽。
それぞれ雰囲気の異なる独立した作品でありながら、
2点でひとつの作品になるという試みだ。
遠目で見てインパクトに圧倒され、
近くで筆致をじっくり眺めてその細かさに驚かされる。
これほどのボリュームの作品にどのくらい時間をかけるのか聞くと、
それぞれ約2カ月とのことだった。その間、並行して制作は行わないのだそう。
なぜならば、「横着してしまうから」だという。
その意味するところは、手元にある色をつい使ってしまうから、とのことだ。
一つひとつの作品に向き合って、最もふさわしい色を載せていくということなのだろう。
彼女の制作にかける思いは、そんな言葉からもうかがえる。

会場を見渡すと、南国をテーマにしていることもあって、
とても色鮮やかで、躍動感がある。
描かれている鳥も象も植物たちも、
それぞれ生命力にあふれていて、生き生きとした印象を受けた。
なかでも、今回のDMに使われている作品は、
硬質な銀色の箔に濃密な色合いがよく映える。
また、どの作品にもいえることだが、背景に至るまで
細かく描き込んだモチーフの、なんと美しいこと。
いつまで見ていても飽きないほどだ。
やはり、これは印刷物ではなかなか再現できない。
実物を見なければ、本当の良さはわからない。
美術館やギャラリーをわざわざ訪れる意味は、
こうしたところにあると言っていいだろう。

また、絵だけでなく額装の工夫が見られるのも、展示ならではだ。
栗原さん自身がアイデアを出したという
「おかもち」風の額がユニークで気に入った。

以前と比べると、作品の存在感が増してきているように感じられるのは
絵を描くことへの熱意がよりいっそう強くなっているからではないだろうか。
一つひとつの作品のクオリティはもちろん、
抽象的な絵など新たな分野への挑戦にも、
そんな彼女の意思が表れているのではないかと思う。

わたしが観に行った日はあいにくの天気だったが、
それにもかかわらず多くの人が足を止め、ギャラリーを訪れた。
ガラスを通していても、栗原さんの作品が発する“圧”が
伝わるんじゃないかとも思った。

こうしたギャラリーでの展示は、作家自身の言葉に触れることもできて
見ごたえ以上のものを得ることができる。
制作にまつわるエピソードを知れば、
作品に対する見方が変わったり深まったりもする。
作品の魅力とともに栗原さんの素顔を知る機会でもあり、
刺激に満ちた時間となった。

<栗原由子さんホームページ>
http://yuko-kurihara.com/

nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:アート

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。