「サッちゃんの明日（あした）」 [舞台]
「サッちゃんの明日（あした）」
作・演出：松尾スズキ
出演：鈴木蘭々、宮藤官九郎、猫背椿、皆川猿時
星野源、家納ジュンコ、小松和重、松尾スズキ
10/3（土） シアタートラム
毎度おなじみ、チケットの取りづらい大人計画。
今回も、何度もトライしたあげく取り逃がしてクサッていたところ、
かうぞうさんからありがたいお誘いを頂いて、観に行ってまいりました。
会場の規模に合わせたのか、
単に役者のスケジュールが合わなかったのか、
大人計画の公演にしては、珍しいほど出演者がすくない。
キワモノ役者（？）の阿部サダヲや荒川良々が出ていないせいか
（皆川猿時は出てるけど）地味な印象を受けたが、中身は濃厚。
大人計画らしさ満載の芝居を堪能した。
舞台は、下町のおそば屋。
もうすぐ30歳になるサッちゃんが、ひとりで切り盛りしている。
一緒に暮らす祖母は株取り引きに夢中、
そして父は何もしていない、いわゆるニートらしい。
サッちゃんの友人であるダンサー志望のつぐみ、
ボーイフレンド（？）の沼田、
またアルバイト希望のヅケヤマテビイチなど、
にぎやかな面々がそろい、一見ほのぼのとしてホームドラマの様相を見せる。
サッちゃんは、足を少しひきずる程度の障害をもっている。
また、沼田も障害者であることから、
ハンディキャップをもった人々をクローズアップしていくのかと思ったが、
それはメインテーマではなかった。
高校生のときにサッちゃんたちが憧れていたPJ先輩が
地元に帰ってきていると聞いて、
サッちゃんとつぐみは会いに行こうとする。
しかし、PJ先輩は予想もつかない状況にあり、
その代理人と名乗る道潅という男が先輩の部屋にいて、
妙な方向に話は展開していく……。
クスリ関係の時事ネタをストーリー中に盛り込み、
「明日」の存在をきわだたせるための仕掛けとして効果的に使っているが、
PJ先輩のくだりは、本当に必要なのか、いささか疑問が残った。
もう少しシンプルにしていれば、テーマがはっきりみえてきたかもしれない。
だけどそうはしないところに、もしかしたら作者の意図があるのだろうか。
主演を務める鈴木蘭々はどうだろう、と思っていたが、
後半になって複雑になってくる難しい性質の役を
主張しすぎず、柔軟に演じていて良かった。
また、彼女を取り巻く面々も相変わらず個性的だ。
松尾スズキのエキセントリックさ、皆川猿時の下品さ、
猫背椿の痛々しく切ないかわいらしさ……。
役者それぞれはどちらかといえばあくが強すぎるが、
力技とも思えるほどの演出で強引にまとめあげられていて、
ギュッと圧縮したエネルギーを一気に放出するような
パワフルな舞台に仕上げられていた。
捨て身でぶつかってくる役者たちの演技は潔く、
品は悪いが（笑）なぜか爽快な印象が残った。
なかでも、失踪していたサッちゃんの母親にぶったまげた。
後に調べてみたら「サモ・アリナンズ」のベテラン女優さんだそう。
文字通り体を張って、エロい動きを交えながら
下ネタだらけの長セリフを滔々と述べ立てる場面が強烈だった。
お約束的に下ネタと笑いをたっぷり盛り込んではあるが、
手放しで笑わせたままでは、決して終わらない。
シニカルな笑いの陰にくらい悲しみが隠されている。
爆笑しながらも、その背後に
どんなメッセージが隠されているのか、
芝居の展開から読み解こうとアタマが勝手にまわりはじめる。
終盤、「そんなオチか！」と思わせておいて
やっぱり明日はあるのかい、といったスピーディーな返しが見事だ。
夢をみることすらうまくできない現代に生きる人々の閉塞感を、
いささか乱暴ではあるが、うまくすくいあげていると感じた。
生きにくい世の中だぜ、だけど明日はあるんだぜ。と、
松尾スズキは、驚くほど真剣なメッセージを伝える。
予想外の方向から全力で打ちだされる強力パンチに、
やはり正面から打ち砕かれてしまった。
正直言って、こんなに悲しい気持ちになるとは思ってもみなかった。
作・演出：松尾スズキ
出演：鈴木蘭々、宮藤官九郎、猫背椿、皆川猿時
星野源、家納ジュンコ、小松和重、松尾スズキ
10/3（土） シアタートラム
毎度おなじみ、チケットの取りづらい大人計画。
今回も、何度もトライしたあげく取り逃がしてクサッていたところ、
かうぞうさんからありがたいお誘いを頂いて、観に行ってまいりました。
会場の規模に合わせたのか、
単に役者のスケジュールが合わなかったのか、
大人計画の公演にしては、珍しいほど出演者がすくない。
キワモノ役者（？）の阿部サダヲや荒川良々が出ていないせいか
（皆川猿時は出てるけど）地味な印象を受けたが、中身は濃厚。
大人計画らしさ満載の芝居を堪能した。
舞台は、下町のおそば屋。
もうすぐ30歳になるサッちゃんが、ひとりで切り盛りしている。
一緒に暮らす祖母は株取り引きに夢中、
そして父は何もしていない、いわゆるニートらしい。
サッちゃんの友人であるダンサー志望のつぐみ、
ボーイフレンド（？）の沼田、
またアルバイト希望のヅケヤマテビイチなど、
にぎやかな面々がそろい、一見ほのぼのとしてホームドラマの様相を見せる。
サッちゃんは、足を少しひきずる程度の障害をもっている。
また、沼田も障害者であることから、
ハンディキャップをもった人々をクローズアップしていくのかと思ったが、
それはメインテーマではなかった。
高校生のときにサッちゃんたちが憧れていたPJ先輩が
地元に帰ってきていると聞いて、
サッちゃんとつぐみは会いに行こうとする。
しかし、PJ先輩は予想もつかない状況にあり、
その代理人と名乗る道潅という男が先輩の部屋にいて、
妙な方向に話は展開していく……。
クスリ関係の時事ネタをストーリー中に盛り込み、
「明日」の存在をきわだたせるための仕掛けとして効果的に使っているが、
PJ先輩のくだりは、本当に必要なのか、いささか疑問が残った。
もう少しシンプルにしていれば、テーマがはっきりみえてきたかもしれない。
だけどそうはしないところに、もしかしたら作者の意図があるのだろうか。
主演を務める鈴木蘭々はどうだろう、と思っていたが、
後半になって複雑になってくる難しい性質の役を
主張しすぎず、柔軟に演じていて良かった。
また、彼女を取り巻く面々も相変わらず個性的だ。
松尾スズキのエキセントリックさ、皆川猿時の下品さ、
猫背椿の痛々しく切ないかわいらしさ……。
役者それぞれはどちらかといえばあくが強すぎるが、
力技とも思えるほどの演出で強引にまとめあげられていて、
ギュッと圧縮したエネルギーを一気に放出するような
パワフルな舞台に仕上げられていた。
捨て身でぶつかってくる役者たちの演技は潔く、
品は悪いが（笑）なぜか爽快な印象が残った。
なかでも、失踪していたサッちゃんの母親にぶったまげた。
後に調べてみたら「サモ・アリナンズ」のベテラン女優さんだそう。
文字通り体を張って、エロい動きを交えながら
下ネタだらけの長セリフを滔々と述べ立てる場面が強烈だった。
お約束的に下ネタと笑いをたっぷり盛り込んではあるが、
手放しで笑わせたままでは、決して終わらない。
シニカルな笑いの陰にくらい悲しみが隠されている。
爆笑しながらも、その背後に
どんなメッセージが隠されているのか、
芝居の展開から読み解こうとアタマが勝手にまわりはじめる。
終盤、「そんなオチか！」と思わせておいて
やっぱり明日はあるのかい、といったスピーディーな返しが見事だ。
夢をみることすらうまくできない現代に生きる人々の閉塞感を、
いささか乱暴ではあるが、うまくすくいあげていると感じた。
生きにくい世の中だぜ、だけど明日はあるんだぜ。と、
松尾スズキは、驚くほど真剣なメッセージを伝える。
予想外の方向から全力で打ちだされる強力パンチに、
やはり正面から打ち砕かれてしまった。
正直言って、こんなに悲しい気持ちになるとは思ってもみなかった。
ツイ
＞cheeさん、nice！ありがとうございます♪
by lucksun (2009-10-15 01:07)
大人計画、pe'zmokuとお付き合い頂きありがとーございました。
遅ればせながら、私もやっとこさ大人計画記事ｕｐしますた。
相変わらず、lucksunさんとは全く違う仕上がり。
もう、そういうもんなんだ、個性よ、個性、と開き直って、
詳細はコチラへと、リンク＆ＴＢ貼らせて頂いてます(苦笑)
いやぁ、松尾スズキ、深いよな、深いわ。
by かうぞう (2009-10-18 23:44)
＞かうぞうさん
こちらこそ、いつもいろいろお誘いいただいて、感謝しておりまする。
芝居やライブをご一緒すると、
どんなレポを書かれるかな、と想像する楽しみもありますね。
pe'zmokuは曲目とかあまりよくわからなかったので、
スルーしちゃいましたが……。
今回の芝居は、あとから結構じわじわきました。
シュールに見せていても、テーマはごく普遍的。
だから大人計画、こんなにもチケットとりづらいのかしら、と思いました。
あ、こちらからもTBさせていただきますねん。
by lucksun (2009-10-19 00:40)
＞ダーツマニアさん nice！ありがとうございます。
＞hiroさん nice！ありがとうございます。
by lucksun (2009-10-19 00:41)
＞りぼんさん nice！ありがとうございます♪
＞xml_xslさん nice！ありがとうございます♪
＞shinさん nice！ありがとうございます♪
＞c_yuhkiさん nice！ありがとうございます♪
by lucksun (2009-10-24 01:16)