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NODA・MAP第14回公演「パイパー」 [舞台]

NODA・MAP第14回公演「パイパー」

1/4(日)~2/28(土) Bunkamuraシアターコクーン



実に18年ぶりに観た野田秀樹作品は、
テイストは相変わらずだが、昔とは印象がだいぶ違っていた。
そもそも、今回の芝居を観ようと思ったきっかけは、
松たか子と宮沢りえの出演であり、
このふたりの芝居を観ることができれば、
多少つまらなくてもいいか、くらいに思っていたのである。
だが、これがとんでもなく失礼な誤解だった。

正直言って、めちゃくちゃ面白い!
役者それぞれの演技と、
エネルギーをひとつも洩らさずまとめあげた構成、
そして印象的で美しい舞台装置が見事な調和をなしている。
2時間強の上演時間中、集中力が途切れることが一瞬もなかった。
というよりもむしろ舞台が進むにつれ、
どんどん目が離せなくなっていったのだ。
やはり芝居をつくる人というのはすごいものだ。無条件で尊敬する。


舞台は1000年後の火星。
松たか子と宮沢りえ演じる姉妹は荒廃した
火星の“ストア”に細々と暮らしている。
もはや食糧もすくなくなり、
生きる希望さえ見いだすことが難しくなってきた。
地球、あるいは他の星から救いの手はさしのべられるのか――。

非現実的な世界を壮大なスケールで描く
SFテイストのストーリーには、
ひじょうに現実的なテーマがギッチリギュギュッと詰め込まれていた。

幸せを数字で表す(測る)ことへの批判。
人間が人間でいるために持つべき尊厳について。
あるいは、最も基本的な命題、生きるとは、どういうことか――。
さらには家族の絆、環境問題、狂信的な宗教への疑問などなど
いくつものテーマが重層的に折り重なり、それぞれを
有機的に絡ませながら、語られていく。
場面もスピーディーに展開するが、
めまぐるしい印象はほとんどなく、混乱することもなかった。
それは、一つひとつのテーマが場面ごとにきちんと整理されていて、
しかも作者の思想が明らかに提示されているからではないかと思う。

松たか子と宮沢りえ、ふたりの主演女優がすごく良い。
彼女たちの役柄上の性格は正反対で、
そのためいつもケンカごしなのだが、
ライバルというよりも同志のようであり、
舞台上で寄り添いながら、お互いの個性をひきだしているようであった。
ふたりが手をつないで、長いせりふを交互に放っていく場面が圧巻。
心の底からほとばしる情熱、エネルギーをたしかに感じさせながら
ことばに魂を載せ、空間いっぱいに声を響かせた。
あまりに力強く切実なことばの洪水にものすごい衝撃を受け、
ふいに胸をつかれて、涙が止まらなくなってしまった。

松たか子と宮沢りえを舞台で観たのは初めてだったが、
彼女たちがこんなにいい役者だとは思いもかけなかった。
そんな驚きを感じることさえ新鮮で、うれしく思う。

また、異星人を演じるコンドルズのメンバーの身体表現がユニークだ。
包容力があるようで、冷たく突き放すようでもある。
状況によってその存在価値が変化する、流動的な生き物を
ゆるやかで流れるような動きで表現していた。


そんな濃厚な芝居を観たあとは、
五感をフルに活用したせいか、ひじょうに疲れた。
この疲れがまたなんとも心地よい。そんな感覚も久しぶり。

そしてその後、興奮さめやらぬままBunkamuraを出て、
円山町方面へずかずか上って行った。
この日は、もうひとつ見逃したくないイベントがあったのだ。

……以下、次の記事へつづく☆
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