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「ルーヴル美術館展」 [アート]

「ルーヴル美術館展」
日常を描く―風俗画にみるヨーロッパ絵画の真髄

2015年2月21日(土)~6月1日(月)
国立新美術館

今回の展覧会はルーヴルの名がつくものとしては
比較的小規模で、16世紀から19世紀のヨーロッパの作品を
約80点、展示している。
テーマは風俗画、いわゆる日常の生活風景を映す作品群だ。
フェルメールの《天文学者》が注目されているが、
それ以外は、特に名のある作品はほとんどない。

風俗画とカテゴライズされるのは、たとえば
商売をしている様子や街角の様子、
あるいは食事や休息の風景、狩りの風景などである。
主に市井の人々が営む普通の暮らしであり、
現代の私たちの日常に通じるところもあり、親しみやすい。
ヴァラエティ豊かな題材も魅力的だ。
全体を通してみると、
作中に登場する人物たちのリアルな姿や表情が目を惹く。

「すでに、古代において……」と題して
風俗画の起源をひも解くプロローグから始まり、
「労働と日々」「日常生活の寓意」「雅なる風景」
「日常生活における自然」「室内の女性」
「アトリエの芸術家」の6章にわたり、展開される。

「労働と日々」では、
さまざまな仕事を営む人物が描かれる。
なかでも興味深かったのは、《抜歯屋》と題する作品。
街かどで抜歯を行う職業の人がいて、
まさにそこで歯を抜いている。
抜かれている人、それをみている人の表情がひじょうにリアルだ。
さらには、みている人の財布を抜き取ろうとする人もいたり、
一枚の絵にいくつものドラマが展開されていて、
中世の暮らしぶりが垣間見える。

「日常生活の寓意」に分類される
フェルメールの《天文学者》は、ひっそりとした作品だが、
どこまでも繊細で、その描き込みに惹きこまれる。
人物よりも書物や天球儀、簡素な室内の様子なども
まるでフィルムに焼き付けたかのようにリアルに映し出される。

そのほか、悪辣な表情を見せる《徴税吏たち》、
ムリーリョの《物乞いの少年(蚤をとる少年)》、
《旅籠屋で休息する兵士たち》、《鹿狩り》、
レンブラントの《聖家族》、または《指物師の家族》などが印象に残った。

最後に置かれた「アトリエの芸術家」コーナーが興味深い。
自画像と思しき画家自身を描いたものもあれば、
猿を擬人化して描いた作品も2点あった。
模倣をする画家を揶揄して描いたものとされるが、
こうしたシニカルな作品には、画家の人間性が
よりあらわれているようで共感を覚える。

街の様子や服装、生活道具までことこまかに描かれ、
作品の生まれた時代背景や登場人物の社会的立場、
経済状況までも、みてとることができる。
さらには、人々のそばに犬が描かれている作品がことのほか多く、
いつの時代も犬が人間と生活を共にしていることが
分かり、うれしくなった。


ここ数年、都内の主要な美術館が
金曜日20時まで開館するようになり、大変ありがたい。
特に予定がなければ美術館に行くという選択肢が加わり、
時間の有効活用ができるようにも思う。
金曜日の芸術活動もなかなか楽しいものです。


<ルーヴル美術館展オフィシャルサイト>
http://www.ntv.co.jp/louvre2015/


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ミホ

lucksunさんのブログを見るたびに「最近、美術館に行ってないな~」と気づかされます(笑)。
絵を通じて、当時の日常を垣間見るって、ちょっと意外な視点ですよね。西洋絵画をそんな角度から見ると面白そうです。

美術館も金曜だけとは言わず、もう少し延長してもらえるとアクセスしやすくなると思うんですけどね~。
by ミホ (2015-05-14 11:02) 

lucksun

わたしも以前に比べると、美術館に行く機会が減ったなあと思います。
でも面倒がっていると、ヒキコモリになってしまうので(笑)、
話題の美術展くらいは観ておこうかと……。
今回は、わりと地味なんですけれど、いろんな見方ができて面白かったですよ。本で読んでもわからないことも、絵で観ればなるほど、と納得する部分もありますしね。
そうそう、美術館も金曜日だけでなくてできれば毎日、いや、週2日からでも、夜間開館が徐々に増えていけばいいのになあ、なんて思っています。
by lucksun (2015-05-17 12:30) 

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