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劇的舞踊「カルメン」 [舞台]


Noism設立10周年記念企画 Noism1×Noism2合同公演
劇的舞踊「カルメン」

6/20(金)~22(日)
神奈川芸術劇場

Noismはりゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館の
劇場専属舞踊団として設立された。
日本初、そしていまだ国内唯一の劇場専属舞踊団である。

クラシックバレエも含め、
ダンスという芸術は日本では
ビジネスとして成り立ちにくい。
その背景には、わが国では
ダンスを含む芸術文化を育てる土壌が
充分ではないことがあげられる。
ダンサーがダンス一本で生活することはなかなか難しく、
さらには定期的に公演を行うためのホール、予算などが
不足しているのが現状だ。
そのためNoismは、日本国内では大変貴重な存在である。

モーリス・ベジャールやネザーランド・ダンスシアターといった
コンテンポラリーダンスを主とするカンパニーが
とても好きで、20代のころからよく観ていたので、
金森穣という名は自然に記憶していた。
その彼が立ち上げた舞踊団の公演を
ずっと観たいと思っていて、今回はじめて観る機会を得た。
舞踊団設立10周年の記念公演である。

今回の演目は、
オペラやバレエで世界的に有名な「カルメン」。
メリメの原作とオペラの台本をもとに、
Noism独自の物語を描くという。
コンテンポラリーダンスでどのように
アプローチするのかに注目が集まった。

舞台は、旅の学者メリメがひとりの男と出会うところから始まる。
その男とは逃亡中の犯罪者であった。
犯罪者と接触したことから学者は成り行き上、
事件に巻き込まれる形となり、語り手として見届けることになる。

……という設定をはじめ、
すべてが新鮮で、一瞬たりとも目が離せない。
影絵や人力回り舞台などを取り入れ、
見せ場を自在に切り替える場面転換やスペースの扱い方が独特で面白い。

野生の女カルメンははだしで自由奔放に動き回り、
誰にも所有されない女の性質を表す。
対してドン・ホセは、婚約者がいながらもカルメンの妖艶さに
惹かれていく葛藤をストイックに見せる。

主役のふたりをはじめ、
登場するダンサーたちの身体表現に圧倒される。
人間の体はこうまで動くのか! 
隅々まで神経を行きわたらせ、体を踊らせる彼らは、
空間と一体になりながらも、
自身の存在を一瞬ずつ焼きつけていくかのようだ。
強靭な筋肉をコントロールすることで生まれる、
ダイナミックで美しい動きに思わずため息が漏れる。
中でも、女たちの群舞、ドン・ホセとミカエラの
パ・ド・ドゥ(でいいのかな)は圧巻だった。

内にパワーを秘めながらも爆発させることなく
コントロールして、ここぞというところで解放する。
コンテンポラリーダンスの真髄、
舞台芸術の極みを観た感がある。

どうしてもテクニックにばかり目が行きがちであるが、
ダンサーたち自身の魅力も存分に表されていたように思う。
井関佐和子演じるカルメンは、
オシャレでカッコ良くてクールなたたずまいがいい。
スタイリッシュなラストもまた素晴らしかった。

自身の体ひとつで表現する人を尊敬してやまない。
限界がわからないからこそ、追い込んで追い求めて
新たな境地を開こうとする姿に惹きつけられてしまう。


自分の目で見ないと分からないことが世の中には多すぎる。
すべてを経験することなんて到底できないけれど、
興味の向くところにはなるべく行くことにしたいと
あらためて感じた。

<Noism web site>
http://www.noism.jp/


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