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「レミング~世界の涯まで連れてって~」 [舞台]

「レミング~世界の涯まで連れてって~」
4月21日(日)~5月16日(木)
パルコ劇場

作:寺山修司
演出:松本雄吉(維新派)
出演:八嶋智人、片桐仁、常盤貴子、松重豊


今年は寺山修司没後30年にあたるため、記念事業や記念出版物が相次ぐ。
本公演はその一環として行われたもの。
寺山が最後に再演を手がけた「レミング」に、
「ヂャンヂャン☆オペラ」という独特の舞台を手がける維新派の松本雄吉が挑む。

寺山の芝居は「毛皮のマリー」しか観たことがない。
あとはテレビで放映されるものを部分的に観ただけという乏しい経験のため、
寺山の演劇はほぼ初体験といっていい。
維新派を観るのも、じつに約20年ぶり。
汐留の空き地(ビル群ができる前の)で小雨の中、
維新派初の「ヂャンヂャン☆オペラ」である
「少年街」(1991年)を観たときの衝撃は忘れがたい。
それまでに観たことのない不思議なパフォーマンスで、
なんだかわからないものの印象深かった。


世紀末を思わせる退廃的な都市を背景に、
表しがたい奇妙な物語が展開する。
中華料理店で働くふたりの男が住む
下宿の壁が突如、消失した。
壁の向こうには病に冒された夫と、看病をするその妻がいたが、
壁が消えたことすら気づかずにいる。
そんな不思議な出来事を機に、出口の見えない迷宮に吸い込まれていく……。

ストーリーだけを取りあげれば不可思議でシュールと言わざるを得ないが、
舞台美術や芝居、音楽といった表現要素それぞれのクオリティは非常に高く、
それらが有機的に絡み合いながら繰り広げる舞台は退廃的かつ官能的な
独特な雰囲気を醸し出しながらも、どこか懐かしく、ふっと心が緩む場面もあった。
役者たちが舞台を埋め尽くし、変拍子に合わせて身体でリズムを刻む群舞場面が非常に面白い。
また、キレよく言葉遊びのように繰り出されるセリフの数々も楽しめた。

主役である片桐仁と八嶋智人が思いのほか(失礼)好演していた。
役者についていえば、松重豊は登場場面が意外に少ない。もっと観たかった。
常盤貴子はルックスは素晴らしいが、舞台向きではないかもしれない。
声が前面に出ないのが惜しかった。


虚構の世界と現実の境目がなくなった状況であるのに、むしろ
固定観念や思い込みといったような心の壁にとらわれているようにも見えた。
考えるというより五感をフルに活用するような、感じる芝居。
寺山ならではの世界観に沿ってはいるものの
全体的にうまくまとめてあって、
モダンかつスマートな芝居という印象だ。


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