「マイ・ブルーベリー・ナイツ」

「マイ・ブルーベリー・ナイツ」　（2007）
MY BLUEBERRY NIGHTS
香港／中国／フランス
2008/03/22公開

監督ウォン・カーウァイ
音楽：ライ・クーダー
出演：ノラ・ジョーンズ、ジュード・ロウ、デヴィッド・ストラザーン
　　　レイチェル・ワイズ、ナタリー・ポートマン


どういうわけか４月も末になって、今年初めて映画館に足を運んだ。
たぶん、今までの最遅記録である。４か月も一体何やってたんだ。
DVDをレンタルして観ることはあったので
映画を観る気がなかったわけではないが、
わざわざ観に行こうと思うほどの気力がなかったんだろう。
もしくは、老化か（笑）。

そんな無気力から脱出できたのは、
ひとえにウォン・カーウァイのおかげだ。
絶頂期の「恋する惑星」や「天使の涙」あたりでハマり、
「欲望の翼」「楽園の瑕」など
過去にまでさかのぼり、一時期むさぼるように観ていた。
その独特な映像と複雑でわかりにくいストーリーは
なぜだかわからないけれど、自分の好みにぴったりだった。

カーウァイの最新作は、舞台をアメリカに移したロード・ムーヴィー。
役者のアップを多用し、時折コマ送りで見せる独特の映像に変わりはないが、
驚くほどスムーズなストーリーはなかなか新鮮だ。


失恋したエリザベスは、別れた男とコンタクトを取ろうと
彼が立ち寄ったカフェに行くが、そこで彼女は
男が新しい恋人とカフェを訪れたという決定的な事実を知ることになる。
傷ついたエリザベスはカフェのオーナー、ジェレミーに慰められ、
行先も決めずに旅に出た。
メンフィス、ラスベガス……とバスを乗り継ぎ、仕事をしながら
渡り歩く先々で、エリザベスはさまざまな人と出会う――。


映画初挑戦となるノラ・ジョーンズが
チャーミングで愛嬌のあるヒロインを素直に演じていて、好ましい。
一方、包容力のあるカフェのオーナーを演じる
ジュード・ロウも色っぽくてよかった。
ふたりが出会ってから、距離感がどんどん縮まっていく様が
微笑ましくて、ずっと見ていたいと思うほど見とれてしまった。

また、エリザベスが旅先で出会う人たちのキャスティングが絶妙。
どこかあか抜けない雰囲気のエリザベスに対して、
レイチェル・ワイズ、ナタリー・ポートマンといった
美女を登場させ、見事に対比させている。
彼女たちはそれぞれ心に深い傷を負っていて、
そこから脱出できずにいたが、飾らずありのままでいようとする
エリザベスの心に触れ、いつしか頑なな心を開いていく。
その姿は凛としていて、とても美しかった。

観ている間、音楽がいいなあと思っていたが、
エンドクレジットを見て納得がいった。
ライ・クーダーだったか。そりゃいいはずだ。
彼の音楽は、アメリカのど田舎の渇いた風景によく似合う。

久しぶりに観たウォン・カーウァイ作品は、
いつになく饒舌だったように思う。
ハッピー・エンディングを迎えたラストもよかった。
もしかしたらそれは、アメリカという土地の大らかさによるのかもしれない。

観たあと、晴れやかになる映画はやっぱりいい。
出不精を克服して、映画館に足を運ぼう。
幸いにも、観たい映画はまだまだたくさんある。

コメント 2

これ、気になってたんですけど、DVDでもいいかな・・・と思ってました。
ノラ・ジョーンズの演技はいかがでしたか？
周りが良い役者ばかりだったので、ちょっと浮いちゃうんじゃないかと
余計なおせっかいを焼いてました（笑）。
ジュード・ロウはちょっと前まで苦手だったのだけど、
最近になって、魅力的な役者さんなんだーと認識しました（遅）。
この映画を見ると、ブルーベリーパイが食べたくなるそうですが・・・（笑）。
by ミホ (2008-05-02 11:21) 

＞ミホさん
この映画、わたしはどうしても観たくて劇場まで足を運んだんですが、
迫力のある映像とかはないので、たしかにDVDでもいいと思いますよ。
ノラ・ジョーンズは無理に芝居をしようとせず、
素のままでいるような感じがかえって好感もてました。
また、周りの役者たちもそれを充分わかっていて
彼女をうまくフォローしているようでした。
ジュード・ロウはわたしもつい最近「ホリデイ」を観て
初めていいな～と認識したところです。
今回も、いい演技してます。
ブルーベリーパイが食べたくなる人、多いらしいですけど
わたしの場合、たばこが吸いたくなりました（笑）。
ジュード・ロウがとにかくしょっちゅうたばこを吸うんですよ。
しかもその姿がいい！　たまらんです（笑）。
by lucksun (2008-05-03 21:36)