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「テリー・ギリアムのドン・キホーテ 」 [映画]

「テリー・ギリアムのドン・キホーテ 」
THE MAN WHO KILLED DON QUIXOTE
スペイン/ベルギー/フランス/イギリス/ポルトガル
2020/01/24公開
監督:テリー・ギリアム
出演:アダム・ドライヴァー、ジョナサン・プライス、ステラン・スカルスガルド

構想から約30年の時を経てついに公開された
テリー・ギリアム監督作品。
新聞の文化欄で公開情報を見たとき、思わず声を上げてしまった。
トラブル続きで頓挫した本作がついに完成したかと思うと感慨深い。

2000年秋、ギリアム監督は
長年あたためていた「ドン・キホーテ」の撮影にとりかかったが、
役者が降板したり、悪天候でセットが崩壊したりとトラブルが続出し、
撮影中止に追い込まれてしまった。その一部始終を追ったのが
2001年に公開された「ロスト・イン・ラマンチャ」だ。
この作品の、なんとも物悲しい雰囲気はいまでも心に残っている。
夢のあと、という言葉がふさわしいと思っていたが、
ギリアム監督は決してあきらめてはいなかったのだ。
未完の大作として終わるのではないかと思われていたが、
どうにか再開して完成にこぎつけたのが本作というわけである。


CM監督として活躍するトビーがスペインの田舎で撮影していると、
怪しい男からDVDを売りつけられた。それはなんと、
トビーが学生のときに製作した映画「ドン・キホーテを殺した男」。
そのロケ地が近くであることを思い出して、ふと訪ねてみたところ、
かつて映画で主役を演じてもらった靴職人の老人と再会した。
老人は自分をドン・キホーテと思い込んでいて、
さらにはトビーを従者のサンチョパンサと思い込み、
壮大な冒険の旅に出てしまうのだった。

その道中で、トビーは学生の時に出会った居酒屋の娘と再会する。
彼女は「女優になれる」というトビーの言葉を信じて芸能界に挑んだものの、
挫折してすっかりやさぐれた女になっていた。
また、旅の途中で出会ったご婦人は、仲間たちと岩山の影に隠れ住み、
貧しい暮らしを送っていた。
行く先々でさまざまな人たちや出来事に巻き込まれつつ、
老人とトビーは成り行きまかせのように歩んでいく。
その先に何が待ち受けるのかもわからず……。

荒唐無稽なファンタジーのようでありながら、
どこか現実味を帯びていて、せつなくもある。
それはもしかしたらギリアム自身の心情を映しているのかもしれない。
衝撃的な作品を世に送り出してきた監督も御年80だ。
さすがに、老いを感じずにはいられないだろう。あるいは
来し方を振り返って思うことがあるのかもしれない。
そうした過去への想いがドン・キホーテに投影されているようでもあった。

まずは、本作が完成したことがうれしい。
さらには、コメディ監督らしさも健在で
ひさしぶりのギリアム節を、ぞんぶんに楽しめた。

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