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直木賞受賞記念 担当編集者たちが語る佐藤正午 [本]

9月11日(月)、三省堂書店神保町本店で行われた
「担当編集者たちが語る佐藤正午」なるイベントに参加した。

佐藤正午の直木賞受賞を記念して、
担当編集者が作家について語るという異例のイベントだ。
先ごろ、佐藤正午は直木賞授賞式を欠席し、
在住地の「佐世保から出ない」ことで話題になった。

彼の読者であれば既知のことであるが、
小説の舞台が東京であろうと海外であろうと、
佐世保から出ずに調査を重ねて、
まるで現地調査を綿密に行ったかのごとく
リアリティあふれる描写をするのが佐藤正午の持ち味なのだ。
ならば、というわけでもなかろうが、
作家が不在のまま編集者たちが語ることで
創作の裏側を探るという試みである。
正午さんはこの日のイベントをもちろん知っていて、
電話で「今日だよね」と話したという。

直木賞受賞作『月の満ち欠け』を担当した岩波書店の坂本政謙さん、
山田風太郎賞受賞作『鳩の撃退法』を担当した稲垣伸寿さんのおふたりが
佐藤正午の創作過程のエピソードや、やりとりなどを開陳した。

裏側の話とはなぜ、かくも面白いのか。
そこに創作に関わる人たちの素の姿が垣間見えるからではないかと思う。
イベントの冒頭で、SNSでぜひ拡散してください、といわれたが、
なかには公表できない話もあり、そのときは
“オフレコ”の札を上げて発言するという洒落た演出もなされた。

自分が手がけた作品が賞を取るというのは、
編集者にとって望外の喜びであることだろう。
わたしは書籍に携わったことがないのでそういう機会は皆無だが、
協力して作り上げた作品が評価されることは
何にも代えがたいのではないかと思う。

稲垣さんは、「佐藤正午は出版社ではなく編集者につく作家」だといった。
いかにも、正午さんらしい。
肩書や年齢で人を見ない、そういう姿勢が作品からもうかがえる。
正午さんのことを語るおふたりはとても楽しそうで、
お互いの仕事を尊重していることがよくわかる。
出版社は異なっても、正午さんを真ん中にした
チームのメンバーという感じを受けた。

作家への愛情と編集者の心意気が感じられる
ほんわかした雰囲気のイベントだった。
こういうイベントを実現できる編集者たちの洒落っ気がいい。


月の満ち欠け

月の満ち欠け

  • 作者: 佐藤 正午
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2017/04/06
  • メディア: 単行本



鳩の撃退法 上

鳩の撃退法 上

  • 作者: 佐藤 正午
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2014/11/13
  • メディア: 単行本



鳩の撃退法 下

鳩の撃退法 下

  • 作者: 佐藤 正午
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2014/11/13
  • メディア: 単行本



※以下、佐藤正午作品のレビュー(本ブログ)。ご参考まで。
『月の満ち欠け』
『鳩の撃退法』
『身の上話』
『アンダーリポート』
『5』
『彼女について知ることのすべて』
『ありのすさび』
『カップルズ』


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