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ポンピドゥー・センター傑作展 [アート]


ポンピドゥー・センター傑作展
2016年6/11(土)~9/22(木・祝)
東京都美術館

ポンピドゥー・センターは、
パリの中心部に堂々とそびえたつ国立の文化施設。
その核をなすのが、国立近代美術館である。
20世紀初頭から現代までの作品11万点を所蔵する巨大な施設だ。
思えばパリには2回行ったが、ポンピドゥー・センターは
前を通りすがっただけで中に入らなかった。
観るものが多すぎたので、次回以降に回したのだと思うが、
あれから約20年もたってしまった。

今回の展示はたいへん斬新な試みで、
1906年から1977年までのタイムラインに沿って、
1年1作家1作品という選び方で時系列に展示されている。
よって、順番に見ていくことで
20世紀フランスの芸術史をたどることができるというわけだ。
作品数は限られているものの、当然ながら
今まで知ることのなかった作家が多く、
バリエーションに富んでいて観飽きない。

そのなかでも華やかな時代というのはやはりあって、
20世紀初頭のフォーヴィズムやキュビズムが台頭したころの
作品群は、群を抜いて印象が強い。
ラインナップを観れば、ブラック、デュシャン、シャガール、
マン・レイ、コルビュジエ(祝・世界遺産決定!)など錚々たるメンバーだ。
またその後に登場するピカソ、カンディンスキー、マティス、
ジャコメッティ(じつは大好きだ)も必見である。

1年ごとにひとつの作品を展示するということは、
その年を象徴する作品が選ばれるということで、
なぜその作品なのかを紐解くと、社会背景や
作風の流行などがうっすらと浮かび上がってくるように感じられる。

年を追って均一に並べられたなかに、一カ所だけ
ぽっかり穴の開いた空間があった。
現代史においてとても意味深い1945年の展示は……。
気になる方は、ぜひご自身で確かめていただきたい。
これほどに気の配られた“展示”はほかにないだろう。
芸術を愛するフランスならではの魂の表れではないかと思う。

今回はどの作品も印象的で、
スポット的に取り上げるのがむずかしいのだが、
絞りに絞ってこの3点。

セラフィーヌ・ルイの《楽園の樹》。
専門教育を受けていない画家が突如として描き始めたのだという、
その作品は描かずにはいられないエネルギーの発露であり、
鮮やかな色彩に彩られた情熱の強さに圧倒される。
どういうわけか私はこうしたアウトサイダー・アートに惹かれてしまうのだ。

そして、カンディンスキーの《30》。
タイル状に描かれたモノクロのモチーフは、
まるで観る者に問を投げかけているようだ。
リズミカルに配されるモチーフは一体何だと思う?
ここに規則性はあるのか? など作品との対話を楽しめる。

さらにもうひとつ、アンリ・ヴァランシの《ピンクの交響曲》。
共感覚をテーマに描かれているところがたいへん興味深い。
共感覚とは、たとえば絵を観て音を感じる、あるいは逆に
音を聴いて色を感じるなどの特殊な知覚現象であり、
それを実際に描いた作品は今まで見たことがなかった。


比較的作品数がすくないので、じっくり観ることができるのもうれしい。
美術館というのは、空間もあわせて楽しむもの。
落ち着いていてゆったりした雰囲気が
とてもよかったと思う。
会期もたっぷりなので、夏休みの文化活動にぜひどうぞ。

<東京都美術館ホームページ>
http://www.tobikan.jp/

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