SSブログ

『カヌー犬・ガク』 [本]

『カヌー犬・ガク』  野田知佑 著


野田さんの本を夢中で読んでいたのは、
かれこれ20年ほど前になるだろうか。
椎名誠の作品を片っ端から読んでいるうちに
よく登場する名前なので自然に覚えたのだと思う。

川を下り、旅先でさまざまな人々と交流し、
エッセイを書く。
そんな著者の生き方にあこがれた。
さらには、河川工事をすすめる行政側の
問題を明らかにする力強い言葉に
はっとさせられることも多かった。

本書は、著者のよき相棒として
13年間、共に暮らした犬のガクにまつわるエッセイを収録している。
中には読んだことがあるものもあるが、
こうしてまとめて読むと、ガクと野田さんの歩みが
手に取るようにわかり、
あらためて縁の深さを感じることができる。

千葉の亀山湖に暮らしているときにやってきた、
愛嬌のある顔をした小さな犬に、著者は
友人の椎名家の少年と同じ名前をつけた。

放し飼いで自由に動き回り、
丈夫に育ったガクは著者とともに世界中を旅してまわった。
中でも、カナダのユーコン川への旅は
著者とガクにとって、もっとも幸せで濃密な時間となった。
魚を釣り、クマと闘い(ガクが)、川沿いに暮らす人々と交流する。
壮大な自然のなか、思いもしない出来事もあるが、
そうした経験を通して、
著者とガクは友情を深めていった。

晩年、フィラリアがひどくなり体調を崩した
ガクの死を目前にして、著者はこう述べる。

犬は好きだが死なれると悲しいので飼わないという人がいる。 ぼくはこんな人は嫌いだ。ガクが死ぬのなら目をそらさずに じっくりと見て、看取ってやろう。 これからが犬を飼うことの本番だ、と思っている。

とうとうガクが死んでしまい、
はじめて寝室に2匹の犬(ガクの息子たち)を入れて
川の字で寝たという件では、思わず胸をつかれた。

つながれずに暮らすことのできる犬なんて、
今の日本では稀だ。
とくに都会でそんなことをすれば、
飼い主は犯罪者扱いをされる。
そうしたことを考えると、
ほとんどつながれることなく、自身の体力を信じて
自然の変化を感じ取りながら川下りを経験することのできた
ガクは、本当に幸せな犬だったのだと思う。

長年の相棒への愛情を表すとともに、
動物と暮らすことについて大切なことを問いかけている。
対等な一人と一匹として向き合ったからこそ、
分かち合うことのできる思いがある。
そういう相棒がいれば、とふと考える。

カヌー犬・ガク (ポプラ文庫)

カヌー犬・ガク (ポプラ文庫)

  • 作者: 野田知佑
  • 出版社/メーカー: ポプラ社
  • 発売日: 2010/06/04
  • メディア: 文庫



nice!(6)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 6

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。