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「ミケランジェロ展」 [アート]


「システィーナ礼拝堂500年祭記念 ミケランジェロ展―天才の軌跡」
9月6日(金)~11月17日(日)
国立西洋美術館


2カ月以上も会期があったのに、いつもの通り
わりとギリギリになって鑑賞。
たまたま文化の日に足を運んだのだが、この日は20時まで開館していたので、
ゆっくり見ることができてとてもありがたかった。
開館時間の延長はたいへん結構。
どこの美術館でも大いに取り組んでいただきたい。

さて、ルネサンスの巨匠のひとりであるミケランジェロであるが、
その作品のほとんどが壁画や天井画、フレスコであるため
現地で鑑賞する以外、観る機会はたいへん少ないといっていいだろう。
今回は、素描を中心に30点以上の作品類と関連作品など合計60点を展示し、
ミケランジェロの創造的プロセスとその秘密に迫る。
なかでも今回の注目作品は、〈階段の聖母〉とよばれる大理石の浮彫。
なんと、15歳前後の若さで制作したといわれている。

作品は4章に分けて紹介される。
第1章は、「伝説と真実:ミケランジェロとカーサ・ブオナローティ」。
会場を入ってすぐに目に入るのは、ミケランジェロの肖像画。
ルネサンスの巨匠を描いた作品は、
見開かれた双眸に意志の強さを、肌艶の良さに創作にかける情熱を表しているよう。
また、このコーナーでは素描の傑作といわれる〈レダの頭部習作〉が注目を集める。
女性をモデルにすることがなかった当時、男性をモデルにして
描いたそうだが、チョークをのせた線の繊細さに目を見張る。
人間の輪郭に、これほどまでに目を奪われるとは思わなかった。

第2章は、「ミケランジェロとシスティーナ礼拝堂」。
ヴァチカン宮殿のシスティーナ礼拝堂に描かれた
「創世記」の場面を中心とする天井画(1508‐12年)と、
祭壇正面壁面の〈最後の審判〉(1536-41年)の
制作工程をひもとき、その秘密に迫る。
ここで展示されるのは、たとえば人間の腕や裸体のポーズを描いたスケッチ、
あるいは全体図の初期構想などだ。
完成系ではないものの、かえって芸術家の思索の過程を
垣間見ることができて興味深い。
また、なかでも目を引いたのは、システィーナ礼拝堂天井画の部分の実物大展示。
その大きさに驚くとともに、すべての絵を描き切るまでに
どれだけの労力と時間をかけたのだろうと、気の遠くなるような作業に思いをはせた。

第3章は、「建築家ミケランジェロ」。
ヴァチカンのサン・ピエトロ大聖堂の建築監督として、
さらにはフィレンツェの聖ロレンツォ聖堂などに大きくかかわった
彼の建築家としての作品を展示している。
いわゆる設計図、パースのたぐいなのだが、
その一つひとつがていねいに描かれていて、まさに芸術的。
柱の配置や造形にアイデアがふんだんに施されていて、
意外な(わたしが知らなかっただけか)一面を見ることができる。

そして第4章では、「ミケランジェロと人体」と題して
ミケランジェロの人体表現に迫る。
彼の作品の特徴は、なんといっても肉体の描写にある。
浅浮彫(スティアッチャート)技法で作られた〈階段の聖母〉は
前述したとおり若いころの作品だそうだが、
憂いを秘めたような表情や柔らかそうな質感を感じさせる
衣服の描写を見る限りでは、とてもそうは思えないほど完成度が高い。
最後に展示してある小ぶりな木彫りの
〈キリストの磔刑〉もまた、質素ながら強い印象を残す。
荒削りのように見えるが、筋肉の様子なども
きちんと表現されていて、熟練の技と力強さを感じさせた。


全体を通して印象的なのは、やはり人体の描写である。
力強い筋肉、やわらかな肌の質感などなど、
どれだけ人間の姿を観察していたのだろうと思わざるを得ない精巧さで描かれる。
中でも、〈最後の審判〉のキリストの描写には驚いた。
若々しく適度に筋肉のついたキリストの姿なんて、
今までお目にかかったことがないのではないか。
まさにルネサンス的表現であると同時に、それ以上にミケランジェロ的である。

会場内のシアターでは、
システィーナ礼拝堂の内部を超高精細カメラで映した
「Sistine 4K ミケランジェロ 完全なる美の記憶」が上映されていた。
現地に行っても観ることができないだろう大きさで再現されていて、
その圧倒的な迫力、繊細さ、美しさに驚くばかり。
ミケランジェロという人の才能にひれ伏してしまう。
神々の姿を描くうちに、神に近づいてしまったのだろうか……。
天才というものはどの時代にもどの分野にもいるものだが、
そうした数々の天才と呼ばれる人のなかでも、
ミケランジェロは突出した才能をもつ人だったのではないかと思う。


また、会期を同じくして
「ル・コルビュジエと20世紀美術」
8月6日(火)~11月4日(月・休)も開催されていた。
ル・コルビュジエが設計した本館の常設スペースが、
彼の作品で埋め尽くされる光景は圧巻。
ル・コルビュジエは建築家として名が知られているが、
絵画や彫刻、映像、タピスリーなど数々の芸術作品を制作していた。
建築についてはある程度概略をつかんでいたが、
芸術作品をこれほどまでに残していたことは、初めて知った。
正直を言えばこれといって印象的な作品はないのだが、
その数の多さとヴァリエーションに感心する。
同時代のキュビスムからの影響、アール・ブリュットへの関心など、
さまざまな分野に興味を持っていたことがうかがえた。

美術館を出たころはすでに閉館時間。
暗闇に沈むル・コルビュジエの設計作品、
さらにはライトアップされるロダンの彫刻群を見ながらの
帰り道がなんとも心地よい。
次回の展示は、
「国立西洋美術館×ポーラ美術館 モネ、風景をみる眼―19世紀フランス風景画の革新」
12月7日(土)~2014年3月9日(日)
こちらも気になる。

<国立西洋美術館ホームページ>
http://www.nmwa.go.jp/jp/index.html


[オマケ]
余談だが、最近みたもののほとんどに共通するのが
アール・ブリュットである。
じつをいえば、仕事でもアール・ブリュット作品を観る機会が多く、
調べてみたところ、近江八幡にこんな美術館があることがわかった。
近江八幡の観光も兼ねて、いつか行ってみたい。

<ボーダレス・アートミュージアムNO-MA>
http://www.no-ma.jp/




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