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「マレーヒルの幻影」 [舞台]

「マレーヒルの幻影」

2009/12/5~12/27 本多劇場

作・演出:岩松了
出演:麻生久美子、ARATA、三宅弘城、荒川良々、
    市川実和子、松重豊


岩松了の芝居作品を一度観てみたかったというのが、まずひとつ。
加えて、荒川良々、三宅弘城をはじめとするキャストの良さが
今回の舞台を観るきっかけとなった。
主役を演じるARATAと麻生久美子は初舞台だったそうだが、
ベテラン役者たちと並んでも、まるで遜色ない。
キャリアに不足を感じさせず、安心して観ることができた。
13日の昼公演を観に行ってきた。

1929年、大恐慌が起きた年のニューヨークを舞台に、
フィッツジェラルド作『グレート・ギャツビー』を下敷きにして
時代の波に翻弄される人々の愛憎を描くドラマ。
ニューヨークに日本人が群れ集う設定に
どこかしら不自然な感じがして最初は戸惑ったが、
観るうちに慣れてきて、違和感がうすれてくる。
違和感があるのはむしろ、外人の役者が登場して
英語のせりふをしゃべることだ。しかも
字幕を出さないのだが、おそらくそれも演出の一環。
わからなくていいのだと思う。

全体をおおう退廃的な雰囲気はフィッツジェラルドの作品世界のままに、
物語の展開というより、エンディングに至るプロセスを見せる。
登場人物たちが交わす会話が変だ。
人の話をまるで聞いていなかったり、
途中でさえぎったり、戻したりと、
とにかくかみあわない会話の応酬を見るかぎりでは、
ディスコミュニケーションがテーマなのかと思ったが、
それはあくまでもレトリック的な手法に過ぎず、
最終的には三角関係のもつれに終わるという、
ありきたりのロマンスなのであった。

音楽やコントなどの要素が入らない、
いわゆる演劇らしい演劇を観たのは久しぶりだ。
手放しにおもしろいと言える演目ではないが、
きちんと向きあって考えながら観る芝居も悪くない。
頭の中の日頃使っていない部分が活性化されたような感じがする。
こうした作品は、いつか何かに変換されて、
いずれ自分の中に蓄積されてゆくのだろうと思う。

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かうぞう

この舞台、出演者が魅力的で行きたいと思ってたのですが、
12月はあれこれと都合が合わなくて・・・。

ARATAと麻生久美子、どうなんだろ?と思ってましたが、
よかったようですねー。
確かにストレートプレイって私もほとんど観ていないかも。
うん、こうしてちゃんと向き合うのも必要なのかもしれませんね。
しかし、lucksunさんのブログはいつも深いなぁ、洞察力が。
by かうぞう (2009-12-23 12:01) 

lucksun

>かうぞうさん
この芝居を観るきっかけって、さかのぼって考えてみたら
「時効警察」なんじゃないかな、と思います。
麻生さんの演技を見たのはたぶんそれが最初だったので。
岩松さんの演出は意外ととっつきにくいですけれど
ハマれば癖になるんじゃないかしら。
ストレートプレイは観るほうも体力と集中力を試されますね。
でも年に一度くらいはこうした舞台を観るのも
必要なんじゃないかと思いました。
麻生さんもARATAもとってもよかったですよ。
これからも芝居にどんどん出てほしい。
まだまだうまくなる人たちだと思います。
by lucksun (2009-12-24 00:08) 

lucksun

>xml_xslさん nice!ありがとうございます♪

>+kさん nice!ありがとうございます♪

>bluebirdさん nice!ありがとうございます♪
by lucksun (2009-12-24 00:34) 

lucksun

>YAOJIMAさん  nice!ありがとうございます♪
by lucksun (2009-12-27 23:52) 

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