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「マグリット展」 [アート]

「マグリット展」
3月25日(水)~6月29日(月)
国立新美術館


イマジネーションがたいへん豊富で多作な人だ。
すなわち作品数が多い。
1988年に近代美術館で行われた展覧会以来、
関連の展覧会があればわりと観ているほうだと思っていたが、
それでもまだすべてを網羅できず、
観たことのない作品がその都度ある。
まるでいまだに作品を生み出し続けているかのようだ。

今回は、国内外から約130点を時系列に展示している。
画家の創作活動とその時代背景のかかわり、
さらには作風の変遷を見ることによって、
マグリットのイメージの源泉や思想を浮かび上がらせる。

まずは、画業に専念する以前の広告関連から。
初期作品として、ポスターや書籍の表紙など、
いわゆるグラフィックデザインの類が展示される。
マグリットの作品はどちらかといえば
ポップアート的な色合いの作品が多く
一見、大衆に受け入れられやすいものが多いが、
そうした作風のきっかけは、この時代にあったのかもしれない。

その後はシュルレアリスムとの出会い、反発、
印象派へのアプローチなど、時代が移り変わるとともに
その都度なんらかのきっかけにより、作風が変わっている。
なかでも最も顕著なのが、第4章:戦時と戦後(1939~1950)。
作品が“暗い”と批判されたことに反発するように、
やけに明るい色合いの開放的な作品が並ぶ。
マグリットのもっともポピュラーな作品は、
この時代のものが多いのではないだろうか。

マグリットの作品につねにつきまとうのは“疑問”である。
何を意図して描いたのか一度観ただけでは分からないものばかりだ。
画家はおそらく、観る者に思考することを要求しているのだろう。
芸術作品とは美しさを提示するために存在するのではなく、
作家と観る者との対話を促すためのものであるべきだという
サジェスチョンが込められているかのように思える。

田園風景の中央に置かれたキャンヴァスには、
そのキャンヴァスがさえぎっているはずの風景が描かれている。
遠目で観れば、そこにキャンヴァスがあるとは
気づかないほどのリアリティをもって。
しかし、その後ろに同じ風景が展開しているとは限らない。
なぜここに、キャンヴァスがあるのだろう。
それがさえぎっているものは何だろうと考えずにはいられない。

マグリットは大変なテクニシャンである。
色や構成のバランスは見事というしかなく、
画力の確かさは言うまでもない。
巧みさゆえの説得力と迫力に満ちている。
手ぬかりなく語りかけてくる作品を観るうち、
画家の熱量に圧倒されてしまう。

今回の注目作品は、
帽子をかぶった紳士が大勢宙に浮いている《ゴルコンダ》。
ほか、《大家族》《白紙委任状》といった代表作群も
ダイナミックでたいへんすばらしい。
個人的には、《自由の入口で》と題された大作が気に入った。
いずれも濃厚で点数も多いので、
すべてをじっくり観るには、思いのほか時間がかかる。
これから観る人には、時間に余裕をもって行くことをおすすめしたい。


<展覧会オフィシャルサイト>
http://magritte2015.jp/
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