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「ロバート・キャパ/ゲルダ・タロー 二人の写真家」 [アート]

「ロバート・キャパ/ゲルダ・タロー 二人の写真家」

1/26(土)~3/24(日)
横浜美術館


東京でソメイヨシノの開花宣言が出された暖かな土曜日、
久々に横浜美術館まで足を延ばした。


“ロバート・キャパ”は、
アンドレ・フリードマンと、公私ともにパートナーだった
ドイツ人女性ゲルダ・タロー(本名ゲルタ・ポホリレ)の
二人によって生みだされた架空の写真家だったという。
1934年にパリで知り合った二人は、無名だったアンドレの写真を売り込むため、
“ロバート・キャパ”という架空の名前を作り出した。
仕事が軌道に乗り始めるとフリードマン自身がキャパとなり、
ゲルダもまた、キャパのもとで写真を勉強して報道写真家となるが、
ゲルダは1937年スペイン内戦で戦死。
その後、彼女の名前が世に出ることはほとんどなかった。

今回の展示は、横浜美術館が所蔵する
193点もの作品を一堂に展示するという初の試み。
さらには印刷物などの関連資料も含め、膨大な作品が展示されている。
ゲルダの作品を初めて見ることができるという意味で、
さらにはキャパの全活動を網羅するという意味でも、見る価値は充分あった。

展示の構成は、
[Part 1]ゲルダ・タロー Gerda Taro Retrospectiveと
[Part 2]ロバート・キャパ Robert Capa Centennialの
二つの個展という形をとる。

まず最初は、ゲルダ。
彼女が使用するのは、ローライフレックスという正方形の画面を映すカメラ。
そのため構成が独特で、空を大きく撮りこんだ画面や
背景を入れこむことで撮影対象の背景や
パーソナリティを伝えるような作品が見られた。
キャパと比較してみると、繊細でアーティスティック。
戦場でもどこでも人物に寄った作品が多く、
ゲルダの人柄をうかがわせる。

対してキャパの作品は、いかに情報を多く入れるかに
注力しているように思える。
すなわち、報道に徹しているということだ。
そこに起きている事柄はもちろんだが、
居合わせた人物の表情やしぐさにこそ、戦争の悲惨さ、緊急性、
活動にかける思いなどが表れることを示唆するようだ。

ゲルダとキャパが同じ日に撮った写真を
並べた展示がとても興味深かった。
同じ場面を映しているはずなのに、こうも違うのかと驚く。
焦点の置きどころ、画面構成などに二人それぞれの
写真に対するスタンスが表れている。

戦争の写真ばかりではない。
キャパは新聞社の招聘により、1954年日本に来た。
その際に映した作品の数々は、寺社仏閣や観光名所のたぐいではなく、
市井の人々の日常生活やなにげない風景だった。
東京駅に子どもが所在なげにたたずむ作品など、
いわば“普通の人の普通の時間”を見ると、ほっとする。
戦争の写真は、迫力はあるものの、
そればかり見ていると、やはり心が重くなるものだ。

この世からすべての戦争がなくなれば自分は失業する、と
キャパはゲルダに言っていた。
彼は自分が失業しても、戦争がなくなるほうがいい、と
思っていたにちがいない。
戦場を職場とし、それまで多くの凄惨な場面を見てきた経験から、
身をもって感じていたのではないだろうか。

ゲルダと知り合うことがなかったら、
キャパはこれほど有名にならなかったかもしれない。
あるいは、ゲルダが戦死しなかったら、
キャパより有名な写真家として、後世に語り継がれたかもしれない。
そんな仮定ばかりが、脳裏に浮かぶ。
二人の写真家の偉業を目に焼き付けると同時に、
頭の隅で、人生一寸先は闇だ、何が起こるか分からないと
通奏低音のように感じ続けていた。

キャパの十字架

キャパの十字架

  • 作者: 沢木 耕太郎
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2013/02/17
  • メディア: 単行本



ちょっとピンぼけ (文春文庫)

ちょっとピンぼけ (文春文庫)

  • 作者: ロバート・キャパ
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 1979/05
  • メディア: 文庫



<オマケ>
横浜といえば、ありあけのハ~バ~♪
いまはこんなに種類があるんだよ。都内では手に入らないんだよな。
IMG_1567.JPG

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コメント 2

ミホ

面白そうな写真展だったのですね、行きたかったなぁ!
ロバート・キャパは最初は架空の写真家だったとは、ドラマティックな話ですね。「ちょっとピンぼけ」は相変わらずAmazonのカートリストにはいっているものの、読む余裕がないのがつらいところです。まず注文しないと(笑)。

ありあけのハーパーって昔からある銘菓ですよね~。なにげに限定販売なのが惜しくもあり、らしくもあります(笑)。久しぶりに食べたくなりました。

by ミホ (2013-04-02 18:56) 

lucksun

>ミホさん
キャパは架空の存在だった……って、わたしも初耳で驚きました。
公私ともにパートナーだったゲルダについても
ほとんど知らなかったので、発見の多い写真展でしたよ。
ただ、充実しすぎで観終わった後、かなりぐったりしてしまいました(笑)。
戦争の写真がメインだからというのもありますが……。
『ちょっとピンぼけ』も面白いですから、
お時間ある時に読んでみてくださいね。

ありあけのハーバー、昔は普通にあるから
あまりありがたみがなかったけれど、
最近種類が増えたりなんだりで気になっていたのです。
横浜在住の妹が本店に案内してくれたので(関内駅近くです)、
思わず大人買いしてしまいました(笑)。
懐かしくておいしかったです。しっとりしていてコーヒーに合いますね。
by lucksun (2013-04-03 01:25) 

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